アバターやトイストーリーなどの3D話題作が次々と成功を収めていますが、最近ではとうとう映画に限らず3D対応のTVやblu-rayレコーダもぞくぞく発表されています。家庭用3Dビデオカメラが発売される日もそう遠くないかもしれません。そうなってくると必須になってくるのが、「3D編集」です。巷では様々なムービー編集のソフトが使われていますが、最も3D編集に適したソフトは一体どれなのでしょうか?? 今回はFinal Cut ProやAdobe Premiereのステレオ編集の方法を比較しながら、マニュアル形式で紹介していきたいと思います。
1. 3D編集とは?
3D映像 (立体映像、ステレオ映像) は、左目用・右目用の2つの動画から作ることができます。3D編集においての主な作業は以下の4つです。
左右映像を完全にフレーム同期する。
→3D製作をする上で必須の作業です。編集も全く同じカット割をしなくてはいけません。
立体感・奥行き感を調節する。
→左右の動画の視差調整によって、立体感をコントロールします。
ゴーストやちらつきを排除する。
→3D動画における”見やすさ”は2Dよりもかなりシビアに考えなくてはいけません。
3D形式で出力する。
→いくつかある出力形式のなかから、用途に合ったものを選んで出力します。
上記の作業がどのくらい効率的に行えるかが、3D編集ソフトを選ぶ基準になると思います。
2. Final Cut Proの場合
Final Cut Proでの3D編集で主流なのは、Stereo3D Toolboxを使う方法です。Stereo 3D ToolboxはMac用の有料プラグインで、Final Cut Pro, Final Cut Express, Motion, After Effectsで使用することができます。左右の動画を一つの3Dクリップとして扱うことができ、カット編集も一回で済みます。視差調整やカラーコレクションなどの機能と、チェッカーボードやインターレース、side-by-sideでの出力機能があります。
1.クリップの準備
まずブラウザに左右の動画ファイルを読み込みます。ビューアを二つ開いて、それぞれに左右のクリップを表示します。
イン点とアウト点を左右同じ瞬間のフレームに打ちます (イン点:i, アウト点:o)。それぞれCtrl+Uでサブクリップ化します。
左右のサブクリップが同じデュレーションになっていることを確認します。
2. Stereo3D Toolboxの適用
左のサブクリップにStereo3D Toolboxを適用します。
エフェクト > ビデオフィルタ > Dashwood Cinema Solutions > Stereo3D Toolbox
「Right Eye」のボックスに右のクリップをドラッグ&ドロップします。
これで左右のクリップが一つになります。
もし上の画像のように適用されない場合は、ブラウザで左右クリップの優先フィールドを"なし"にすると正常に適用されます。これはインターレース素材を扱う時に発生するバグだそうです。
3. ステレオ調整
フィルタメニューのConvergence controlsにチェックを入れると、縦・横・回転・ズームなどのパラメータを調整することができます。
現在出力モードがSide-by-Sideになっていますが、これでは立体視の確認ができません。出力モードをアナグリフに変えます。
ビューアにあるクリップを下のタイムラインにドラッグ&ドロップし、そのシーケンスをダブルクリックして、ビューアに表示します。こうすることで、ビューアでパラメータの調整、キャンバスで立体視の確認、というスタイルで編集を進められます。
カット編集は通常のクリップと同じように行います。
3. 3D形式での出力
Stereo3D Toolboxは以下の3D形式で出力可能です。
Side-by-Side, Over / Under, Interlaced, Checkerboard, Anaglyph
プリセットでディスプレイごとに設定を選ぶこともできますが、仕様上プリセットを選ぶとアナグリフで調整したパラメータがすべてリセットされてしまいます。あらかじめプリセットの設定を確認しておき、アナグリフ調整した後に手動で設定するのが望ましいでしょう。
Side-by-Sideが万能ですが、例えばDLPディスプレイに出力するときはチェッカーボードで出力すれば専用のソフトを使わなくても立体視再生可能なコンテンツをつくることができます。
出力は通常の書き出しで行います。
4. まとめ
Stereo3D Toolboxを使うと、ほとんど通常の編集と変わらない手間で編集できます。左右のファイルを一つのクリップとして扱ってくれるので無駄なシーケンスを作る必要がなく、スマートな編集を行うことができます。まだまだバグが多いプラグインですが、Final Cut Proでのステレオ編集には必須になっていきそうです。
3. Adobe Premiereでの編集
Premiereには3D編集用のプラグインで主流となり得るものがまだありません。基本的には左右のファイルを別々に出力するか、自分でside-by-sideを作って専用ソフトで再生することになります。Final Cut Proもプラグインを使わない場合は同じような編集になります。
1.クリップの準備
最初の行程はFinal Cut Proとほとんど同じです。プロジェクトに左右のファイルを読み込み、全く同じシーンのサブクリップを作ります。Premiereはソースウィンドウを二つ以上開けません。片方にイン点アウト点を打ったらまずそれをシーケンスに挿入し、シーケンスビューを参照しながらもう片方のファイルのイン・アウト点を打ちます。
ウィンドウからCtrlを押しながらプロジェクトタブにドラッグすると、サブクリップが生成されます。
2. ステレオ調整
Premiereでは立体感を確認しながらステレオ調整することはデフォルトの状態ではできません。ステレオムービーメーカーでステレオ調整してからPremiereにインポートする方法もありますが、AVCHDをネイティブで編集したい場合を考えると現実的ではありません。しかし立体視の原理を理解していれば、リアルタイムな確認なしで調整することは不可能ではありません。
・右の映像が右、左の映像が左にあるとき
立体視したとき、ディスプレイより奥の位置に見えます。
・映像がぴったり重なったとき
立体視したとき、ディスプレイの手前でも奥でもないニュートラルな位置に見えます。
・右の映像が左、左の映像が右に見えるとき
立体視したとき、ディスプレイより手前の位置に見えます。
上記の事をふまえて調節していきます。基本的に撮影したときの状況と同じようにすると安定した自然な映像ができあがります。撮影時に奥にあったものは奥に、手前にあったものは手前に見えるように調整しましょう。
まず2つのシーケンスに左右のクリップをそれぞれ挿入します。左シーケンスの左クリップの上のレイヤーに右シーケンスを挿入します。
右シーケンスの中のクリップは不透明度を50ほどに下げておきます。これで左右の視差がわかります。
視差がよく見えない場合は、左右どちらかの色味を変えて重ねてみましょう。
視差調整はエフェクトコントロールのモーションから位置を調節します。
3. 3D形式での出力
冒頭で書いたように、Premiereにはチェッカーボードやインターレースで3D出力する機能はありません。今回はside by sideを作ってみたいと思います。
新しいシーケンスを作ります。解像度は素材のクリップを横に2倍した値にしてください。
シーケンスに先ほどと同じように左クリップと、調整後の右クリップが入ったシーケンスを挿入します。左と右のクリップをそれぞれ左右に並べて完成です。
書き出しは通常のムービーと同じです。
4. まとめ
3D編集用のプラグインで決定的なものがないので、少々手間のかかる作業になりました。左右のクリップを別々に扱うので作業は単純に二倍になってしまいます。カット編集についても、左右のタイミングが合っているのか逐一確認しなくてはいけないので、かなりストレスが溜まります。
4. まとめ
両者ともプラグインを使わない場合の編集方法や手間はほとんど変わりませんが、Stereo3D Toolboxを使用できるFinal Cut Proは圧倒的に有利であると言えます。作業量はほぼ半分になり、ディスプレイに最適化すればファイルサイズも小さくできます。MacであればFinal Cut Proのほかに、Motion、After Effects、でも使えるのでオススメです。PremiereはAVCHDをそのまま編集できるという大きな利点があるので、使える3Dプラグインが出ればFinal Cut Proを凌ぐステレオ編集ツールになるのではないでしょうか。