前回のOptiTrack Reviewでは、セットアップに関する部分を書きました。今回はOptiTrackを使う上で重要なARENA Motion Capture Softwareについて書きたいと思います。前回のセットアップ編については、こちらをご覧ください。
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Introduction
OptiTrackはNaturalPoint社が販売している低価格な光学式モーションキャプチャシステムです。従来の光学式モーキャプシステムは、システムを導入するだけでもかなり高額(数千万円くらい)なものでした。しかし、このOptiTrackを用いることで今までの10分の1以下に抑えることが出来ます。個人で利用するには高価だと思いますが、手軽にモーションキャプチャが行えるという点は非常に良いと思います。
前回のOptiTrack Reviewは、セットアップに関するレビューでした。今回は、NaturalPoint社から提供されているARENA Motion Capture Softwareを用いて撮影する際に、工夫の必要な設定部分を中心に書いていきたいと思います。前回のセットアップ編については、こちらをご覧ください。
List of Content
- Calibration Wizard
- 内容
- Calibrationでの注意点
- Skeleton Wizard
- 内容
- Skeleton Wizardでの注意点
- Rigid Body Wizard
- まとめ
今回のレビューの中心となるARENA Motion Capture Softwareのチュートリアルビデオが、オフィシャルページにて公開されています。レビューを見る前に一度視聴されることをお勧めします。
1. Calibration Wizard
Motion Captureの撮影では、撮影前に様々な設定が必要になります。今回使用するARENA Motion Capture Software (以下ARENA)には、それらの設定を行うためのWizardが3種類用意されています。
- Calibration Wizard
- Skeleton Wizard
- Rigid Body Wizard
ここではCalibration Wizardについて説明します。
内容
OptiTrackは光学式モーキャプシステムですので、当然ながらCapture Volume (撮影範囲)を設定する必要があります。そのためにARENAではCalibration Wizardが用意されています。Calibration Wizardの流れは以下の通りです。
使用するカメラの選択
↓
各カメラの設定
↓
Wandを用いたCapture Volumeの設定
↓
Capture Volumeの計算
↓
Calibration結果の確認
↓
原点を設定
↓
最終的な確認
Calibrationでの注意点
Calibration Wizardで注意が必要なのは、以下の3点です。
- 各カメラの設定
- Wandを用いたCapture Volumeの設定
- Capture Volumeの計算
各カメラの設定についてですが、数ある設定項目の中でもこれが最も重要です。特にIntensityとExposureの値が重要です。
設定時にカメラにノイズが映っているようであればまずその原因を見つけます。具体的には、
- 自然光(日光)もしくは、自発光している物が映りこんでいる
- カメラから照射している赤外線が強すぎる
のいずれかだと思われます。これらを見分けるには、カメラ設定の項目にある"IR LEDs Enabled"という項目のチェックを外します。これはカメラに搭載された赤外線LEDを使用するかどうかを選択する項目です。このチェックを外すことでLEDをオフにできます。この状態で写っているノイズはカメラから照射される赤外線とは関係の無いもの、つまり自然光などが原因になっているものであると分かります。この場合はThresholdとExposureの設定でノイズが写らないように設定してください。LEDのオン・オフによりノイズが消えたり現れたりする場合は、前述の2つに加えIntensityの設定も変更するようにしてください。

カメラの設定におけるIntensityについてですが、最大値(15)に設定するのはお勧めできません。Intensityを最大値に設定してCalibrationを行うと簡単にいい結果が得られます。しかし、実際に撮影してみるとノイズが大量に発生することがあります。そのため、私たちが撮影する時は8~14の間の値に設定しています。注意しなければならない点は、Intensityの最大値(15)と一つ下の値(14)との差が非常に大きいと思われる点です。14以下の値ではそれぞれの差はあまり分からないと思いますが、画面で見ている限りでは15と14の差ははっきりと分かるほどです。これを考慮したうえでExposureとThresholdの設定を行うようにしてください。どうしてもノイズが入ってしまう場合は、ノイズ部分をマスクして撮影しないようにします。"Block All Visible Points"というボタンを押すと、現在認識されているマーカー部分にマスクします。各カメラのプレビューをドラッグすると任意にマスクする事もできます。Intensityを下げるとカメラの撮影範囲(視野・奥行き)が狭くなるので、Intensityを下げずにノイズをマスクして撮影するのも一つの手だと思います。
次にWandを用いたCapture Volumeの設定についてです。ここではキャプチャー時間を設定する必要がありますが、"Fast"を設定すれば大丈夫です。長い時間キャプチャーした方が良いと思われるかもしれませんが、経験上"Fast"が最も安定していると思われます。これは、長時間キャプチャーしても次のステップであるCapture Volumeの計算時にエラーが出ることが多いためです。設定は"Fast"、Wandはゆっくりと円を描くようにするのがコツです。カメラの設定がきちんとできていれば問題無いと思いますが、キャプチャー中にノイズが発生してカメラの画面が赤くなるようであれば、もう一度カメラの設定を見直してください。

Capture Volumeの計算についてですが、ここも難しいことはありません。設定項目は一つしかありませんし、複雑な操作もありません。"Data Points"の値を変更するだけですが、だいたい500~800の間にしてください。"Fast"でWand Captureを行うと初期値が300だと思います。あとは"Start Calculation"を実行し、結果を待つだけです。最終的に各カメラの状態が表示されます。カメラの状態は、"Poor"->"Fair"->"Good"->"Great"->"Excelent"の5段階で表現されています。できれば"Good"以上が望ましいですが、"Fair"でも問題ないと思います。

Calibrationのデータは保存することができます。しかし、ARENAが強制終了してしまったなどの場合(カメラの位置などが変更されていない場合)を除いて、使いまわすことはしない方が良いと思います。なぜなら、前日に保存しておいたCalibrationのデータをそのまま翌日の撮影に使用した場合、カメラの位置や明るさの変化によって前日にはないノイズ源が存在したり、ノイズ源が移動している可能性があるためです。
2. Skeleton Wizard
Skeleton Wizardではマーカーの付ける位置の説明からARENA内の人型オブジェクト(Skeleton)をリアルタイムで動かすための設定を行います。
内容
Skeleton WIzardは前述の通りARENA内でリアルタイムにオブジェクトを動かすための設定です。撮影自体には影響しませんが、マーカーの付ける位置などの説明があるので出来る限り使った方が良いでしょう。以下がSkeleton Wizardの流れになります。
マーカーの位置説明
↓
T-Poseの撮影・選択
↓
アクターの設定(身長・肩幅)
↓
T-Poseの抽出
↓
Maker Assign
↓
最終的な確認
Skeleton Wizardで起こる問題は、ほとんどがCalibrationの影響によるものと考えられます。もしうまくいかない場合はCalibrationからやり直してみましょう。
Skeleton Wizardでの注意点
最初にマーカーをいくつ使用するのかを選びます。デフォルトでは34個使用します。この場合は"Create New Template"を選択して次に進んでください。後述のRigid Body Wizard等で作ったデフォルトとは異なるマーカー数のTemplateを使用して撮影する場合は、そのTemplateファイルを開いてください。今回はデフォルトのTemplateを使用する場合の説明です。
まず、マーカーの付ける位置の説明が始まります。もちろんこの説明をスキップすることも可能です。マーカーの位置をしっかりと覚えるまでは説明に沿って作業した方がいいでしょう。

マーカーを付け終わると、T-Poseの設定になります。初めて行う際にはT-poseを撮影する必要がありますので、3つあるうちの一番下、"Record a new T-Pose"を選択し次に進みます。前述のCalibration WizardでCalibrationがうまくできていれば何も難しいことはありません。あまりにもノイズが多い場合はCalibrationからやり直した方が無難かもしれません。

次にアクターの身長・肩幅の設定があります。この設定は出来る限り正確に入力するようにしてください。誤った設定の場合、撮影中に問題が起きることがあります。具体的には、手をまっすぐに伸ばしているはずなのに曲がっていたり、常に膝が曲がった状態になってしまったりといったことが起こります。

その後撮影したデータの中からT-Poseの含まれるフレームを抽出し、ARENA内の人型オブジェクトにマーカーレイアウトをフィットさせる作業になります。この部分もCalibrationがうまくいっていればそれ程難しいことではないでしょう。T-Poseの抽出はマーカー数がデフォルトのマーカー数と同数出なければ抽出できません。そのため、ノイズが多い・マーカーが少なすぎるといった場合には抽出できませんので注意してください。どうしても抽出できなければCalibrationからやり直す必要もあります。T-Poseの抽出後は"Marker Assign"という作業になりますが、撮影がうまくいっていればこれも特に注意することはありません。"Auto Assign"で自動的に行ってくれるでしょう。


注意点をいくつか挙げましたが、基本的にCalibrationがうまくいっているかどうかで成否が分かれることになります。ですので、Calibration Wizardはしっかり行うようにしてください。
3. Rigid Body Wizard
Rigid Body Wizardでは、人間以外の小道具等を用いてモーションキャプチャを行う際に使用します。具体的には、小道具に付けたマーカーを用いてARENA内に小道具のオブジェクトを作ります。そうすることでARENA内の人型のオブジェクト同様リアルタイムに動きを見ることができるようになります。
まとめ
今回はARENA Motion Capture Softwareの特色とも言えるWizard関連について書きました。レビュー中にも何度か書きましたが、オフィシャルで公開されているチュートリアルビデオを参考にして頂きたいと思います。また、ビデオだけでなく.bvhファイル形式等のサンプルデータもありますので、どのように出力されるかの確認も可能です。OptiTrackでどのようなモーションが撮れるのか興味のある方、購入を検討されている方は是非ご覧ください。
次回のレビューは、撮影からデータ修正の部分について書きたいと思います。次回掲載予定は9月です。