5 3ds Maxを用いてのレンダリング
このページでは先ほど作成したカラーマップテクスチャをオブジェクトに適応し、3ds Max上でレンダリングします。ZBrushだけでもシーンを簡易的にレンダリングすることはできますがお勧めしません。
理由としては、以下のようなものがあります。
- ライティングの設定が細かに行えない。
- アニメーションが作成できない。
- ファイナルギャザリングが存在しない。
他にもいろいろな制限が存在します。
しかしZBrushは他のソフトとの連携が強いので、他のソフトにシーンをエクスポートしてレンダリング、と言う形が作品のクオリティ的にも作業的にも一番効率的ではないかと思います。
今回もZBrushでレンダリングを行うのではなく、3ds Maxを使用してレンダリングを行っていきます。
と言うわけで、ここで作業をZBrushから3ds Maxに戻します。
まず、3ds Max上で普段と同じようにオブジェクトにカラーマップテクスチャ(DiffuseMap)を適応します。3ds Maxでテクスチャを適応する際は、psdファイルを扱うとテクスチャの修正を行いつつ3ds Maxでレンダリングができます。
3ds Max上でオブジェクトにテクスチャを適応しましたら、確認のため一度レンダリングしてみます。
Figure5-1 テストレンダリングの結果
オブジェクトには先ほど作成したカラーマップだけを適応してレンダリングしました。
前の章で作成したNormalMapはまだ適応していないので、ディテールはまだ表現されていません。しかし、カラーマップに混ぜたCavityMapのおかげで凹凸情報が色として表現されオブジェクトの表面が凹凸しているかのように見えます。
ですが、Figure5-2のようにズームしてのレンダリングを行いますと、実際には凹凸がなく色だけで表現しているため、微妙な作品になってしまいます。
Figure5-2 ズームしてレンダリング
この問題点を解消するために、ZBrushを使用して作成したNormalMapをオブジェクトに適応します。3ds MaxではNormal Mapを標準でサポートしていますが、お使いのCGソフトによってはNormalMapが対応されておらずに使用できな場合があります。
そのような場合、前回のレビューで記述しました通りDisplacementMapとしてエクスポートするとうまくいきます。
Figure5-3 NormalMapの設定
3ds MaxでNormalMapを使用する場合、バンプマップのパラメータ内でNormalMapを使用します。3ds MaxでNormalMapを作製した場合は、NormalMapがマテリアルの一番上の階層に適応されてしまします。NormalMapが一番上の階層に設定されてしましますと、編集が行いにくいのですが、ZBrushでNormalMapを製作した場合は既にテクスチャとしてエクスポートされているので設定が非常に簡単になっています。
Figure5-4 法線バンプの選択
3ds Maxでは、BumpMapの要素にそのままNormalMapを適用してもNormalMapの結果を反映してくれません。
これはバンプマップが基本的にグレースケールのイメージを使用してコントロールされる要素だからです。グレースケールではなく、RGBの情報を含んでるNormalMapは扱いが少し変わってきます。3ds MaxでNormalMapを使用するには、先ほどのFigure5-4の[None]の場所を選択したら表示される[マテリアル/マップブラウザ]から法線バンプを選択します。
これでRGBの情報を持ったNormalMapをバンプの要素内で扱うことができるようになりました。
Figure5-5 NormalMapを選択
Figure5-5は先ほど選択した法線バンプのパラメータ欄です。私たちが作成したNormalMapを赤枠で囲った[法線: None]の欄に選択しますとオブジェクトにNormalMapの内容が反映されます。
下の方にある[手法]、[チャンネル管理]等のパラメータはZBurshでマテリアルを作成する際に、3ds Max向けに最適の状態でエクスポートしてありますので特に変更する点はありません。また、[手法]の欄にある、[タンジェント]を変更指定しますとオブジェクトの凹凸、陰影の状態が狂うようです。
![]() Figure5-6 NormalMapを適応したオブジェクト |
![]() Figure5-7 NormalMapを使用していないオブジェクト |
以上の作業を行い、NormalMapを使用してレンダリングした結果は右上のもの(Figure5-6)になります。Figure5-6を見てもらうと分ると思いますが、NormalMapと言う非常に強力なテクスチャを使用しますと、見事にオブジェクトのディテールを表現できます。しかし、Figure5-7の画像ではオブジェクトの凹凸を色だけの表現しているためオブジェクトの印象が全く異なります。
カラーマップについても、ZBrushで実際にオブジェクトに色を塗って作成したので、通常のテクスチャ作成方法で見られるオブジェクトの色のずれが見られません。
Figure5-8 最終的なレンダリング結果
先ほどのDiffuseMap、NormalMap以外にも設定を加え、最終的な設定でレンダリングを行ってみました。今回は顔周辺以外のテクスチャをそこまで丁寧に塗っていませんでしたので、ドットが見えてしまいました。
しかし、テクスチャを作成した時間を考慮しますと非常に素晴らしい出来だと思います。
感想、総評
というわけで、実際にZBrushを使用して他のソフトと連携してみました。ZBrushは使用方法が少し難しかったですが、非常に短い時間でオブジェクトのテクスチャやディテールを作成することができました。やはりZBrushの真価は他の3DCGソフトとの併用で発揮されるのだと実感しました。初めから他のソフトと連携して使用することが考えられており、ファイルのインポートやエクスポートといった設定が非常に簡単でした。
今回のレビューではオブジェクトを制作し、テクスチャを大まかに作成しました。DiffuseMapに関しましては、実際に絵を描くようにテクスチャを作成するソフト「Bodypaint」と同様の感覚で非常に詳細なテクスチャまで作成することができました。
ZBrushのインターフェースは洗練されており、スカルプティングの際などに特に使い方で迷うことはありませんでした。ただし、作成したディテールをNormalMapのようなテクスチャにする際などは少し設定に戸惑いました。
またZBrush3.1では従来プラグインであったZMapper、ProjectionMasterが初めから組み込まれており連携が高まっています。ZMapperにおいてはプリセットが複数用意されており、パラメータの設定という複雑な作業の必要がありませんでした。
レビューでは色々なことを試してみましたが、ZBrushはどの機能も使うことを考えられて作られており、非常に操作が行いやすかったです。
全3回に渡って書いてきましたZBrush Reviewは以上で終了です。
不明瞭な点や至らない箇所等あったかもしれませんが、最後まで読んでいただきありがとうございました。
また、今回のレビューでソフトの提供からサポートまでしていただいた、株式会社オーク様の御好意に心より感謝したいと思います。