Maxwell マテリアル の解説
この章では、Maxwell Render に実装されている、マテリアルとライトについて解説したいと思います。
まずはじめに、説明に入る前に理解していただきたい重要な概念があります。
それは、Maxwell Render には他の3Dアプリケーションのような、光源としての「ライト」が存在しません。
通常、3ds max を含め主な3Dアプリケーションでは、「ライト」と「マテリアル」は別物として扱われますが、Maxwell Render では光源はEmitterとしてマテリアルの一部に組み込まれています。
例えるなら、ガラスのマテリアルを設定し、そこに光源としての Emitter レイヤーを追加することによって、そのガラスは光を放つガラス、つまり電球や蛍光灯と同じ働きをシーンに加えることができます。
では、実際にシーンを設定してみましょう。
今回は左図のようなシーンを用意しました。
3つの窓がある四角い部屋の中に、ティーポットとそれを乗せた円柱があり、天井には電球と反射用の笠が設置してあります。
(クリックで大きな画像が表示されます)
まずは、イントロダクションで設定したのと同じ設定でレンダリングしてみました。
それでは、この殺風景な部屋にマテリアルを設定していきましょう。
● Maxwell material library
さて、なれないレンダラーでいきなりマテリアルの設定をしようとしてもなかなか難しいものがあります。
とくに、日常で使わないような特殊な英語が羅列されているのは、それだけでやる気が半減してしまいます。
ですが、Maxwell マテリアルには最初から豊富なマテリアがそろっています。
種類は、ガラスのような半透明のものから、金属(金、銀、アルミニウム)、布、車の塗装のような表面に薄いコーティングのされた素材、光源として使えるライトまで、とりあえず必要なものは何でもそろっているという感じです。
まあ、欲を言えばサブサーフェイス(肌など)のサンプルが欲しいところでした。
まずはこれらのサンプルを試してみて、それからそのマテリアル構造を自分なりに分析してみるのが良いかと思います。
マテリアルの格パラメータの詳細は、付属のチュートリアルを参照すれば、大体のことが書いてあります。
(クリックすると大きな画像が表示されます)
Browse library -> arroway -> concrete-22.mxmを選択します。
注意)ここでテクスチャが見つからないというエラーメッセージが出た場合は、Next Limit 社のHPよりarroway 内のマテリアル用テクスチャをDLしてくる必要があります。
以下のURLよりDLできます。
「ArrowTexture Vol.1」 と「ArrowTexture Vol.2」の2つのファイルをDLしてきます。
解凍後、それらを Maxwell マテリアルがインストールされているフォルダ
例)C:\Program Files\Next Limit\Maxwell\materials database\mxm files\arroway
内にコピーします。
先ほどより少し明るい色のマテリアルが現れました。
ここで少しパラメータの解説。
Reflectance 0;
maxでいうところの拡散反射光カラーになります。
注意)この値をRGB255(真っ白)のような高い値にしないでください。ノイズの原因になります。
Reflectance 90;
フレネル(反射光)カラーです。
Transmittance;
透明度になります。黒が不透明、白が透明です。
Nd;
IOR(屈折率)の設定です。この値はMaxwell マテリアルにとって非常に重要です。
できれば、本体付属チュートリアル(日本語)P28-29を参照されると良いかと思います。
Roughness;
表面の粗さです。値が高いほど、鏡面反射がぼやっとしたものになります。
また、これらのパラメータは1つのレイヤーの上に設定されています。
つまり、複数のレイヤーを設定し、格レイヤーの重さ(影響の強さ)を変更することによって、より複雑なマテリアルを設定することができます。
詳しくは、付属チュートリアルの「マテリアル」を参照されると良いかと思います。
この[wall]マテリアルを、部屋の壁に適応します。
(クリックすると大きな画像が表示されます)
光沢のあるコンクリートを壁に設定したので、部屋の中が、先ほどの画像より幾分明るくなりました。
同じようにして、マテリアルライブラリから自分の好きなマテリアルを選択してみましょう。
ただし、電球(Bulb)にはまだマテリアルを設定しないでください。
以下に、使用したマテリアルとレンダリング結果を乗せておきます。
(クリックすると大きな画像が表示されます)
オブジェクト名 | マテリアル名 |
Floor | Default |
Room | Arroway->concrete-22.mxm |
Room Floor | Arroway->boards-02.mxm |
Shade | jewels->Aluminium_ok.mxm |
Teapot | jewels->Gold_ok.mxm |
Cylinder | generic frosties vol.i-> Turqouise Frost.mxm |
レンダリング時間 30min
到達サンプリングレベル 11
● ライティング
次にこのシーンにライトを追加したいと思います。
図を見ていただくと分かるのですが、実はデフォルトの設定はPhysical Sun と言う太陽光をシミュレートする状態になっています。
まずはこの設定を解除して、シーンに光源が全くない状態にします。
この状態でレンダリングしてみると分かるのですが、光源がないので真っ暗な画像が出力されます。
マテリアルエディタから空いているサンプルにlamp_presets->mercury vapour700w.mxmを選択します。
これを、シーン内の[Bulb]オブジェクトに適応します。
適応後、レンダリングしたのが次の画像になります。
(クリックすると大きな画像が表示されます)
ちょっと暗くて分かりにくいですが、
天井からのライトで部屋が照らしだされています。
レンダリング時間 30min
到達サンプリングレベル 10.5
では、ライトのマテリアルはどのような構造になっているのでしょうか。
ライトのマテリアルパラメータをしたまでスライドすると、Emitterというチェックボックスがオンになっています。
実は、Emitter をオンにするだけでそのマテリアルは、光源としての機能も果たすようになります。
主なパラメータとして...
Type:
輝度の指定方法を決めます。
ワットやカンデラなど自分に分かりやすい単位を使うのが良いと思います。
Watt:
光の強さを決めます。
(正確には光源でどれだけの電気を消費するかの値ですが、ここでは強さとして理解した方が分かりやすいかと)
(クリックで大きな画像が表示されます)
Cylinder に適応したマテリアルのEmitter をオンにしたものです。
光が強すぎて、本来のマテリアルの色などが消えてしまっていますが、光源としての機能が加わりました。
●まとめ
Maxwell Render のマテリアルは、少しクセがあって初めは戸惑うかと思いますが、慣れれば現実の世界の設定に近い考えでマテリアルを設定できるので、よりリアルなレンダリングが可能になるのではないでしょうか。
次はいよいよ1.1からの新機能「マルチライト」を解説したいと思います。