finalToon
開発元: CEBAS
価格: ¥73,500-(税込)
0. 始めに
以前のアニメーションはセルアニメーションが主流だったのに比べ、最近はCGによるアニメーションが浸透しそれによりアニメーターの作業も大分効率化されたと言われています。その上、従来のアニメーションと比べてもその品質やクオリティの高さも目覚ましいものがあります。2DCGアニメーションだけでなく三次元に起こしたものをトゥーンレンダリングによって二次元的に見せる手法も最近よく見受けられますね。今回はトゥーンシェーディング、3ds maxのfinalToonについてレビューしてみたいと思います。
トイレと配管のある部屋を用意しました。これを通常のスキャンラインレンダリングしたものがこちらです。
1.マテリアルシェーディングモードの変更
マテリアルエディタでStandardからfinalToonモードへ変更します。
これでマテリアル割り当てして一度レンダリング。色の設定はともかくアウトラインが追加されました。なるほど、この一つの操作でもうトゥーンモードになってます。非常にお手軽。
通常のstandardなマテルアル割り当てをしたものがこちら。
通常のシェーディングにアウトラインが追加されます。これはこれで3Dの質感が残っていて仕上がりもなかなか良さげなのですが。
しかしここで一つ問題発生。マテリアルを一度finalToonにしてからstandardに変えても変更が効かない!シェーディングは標準のままなのにレンダリング後、アウトラインが入ってしまうのは何故か。これではトゥーンシェーディングのままだよ。一度トゥーンシェーディングに設定をいじってしまうと直しても元に戻らない。新規リセットしないとこれは無理?マテリアルのシェーダーも標準になってるのに結局元に直らず、仕方ないのでとりあえずこのままで進める事にしてみました。マテリアルウィンドウのfinalToon - Shaderでマテリアルの色を設定しました。
ここではマテリアルのOpacityもパラメーターで自由に変える事が出来て設定自体もかなりシンプル、使い易くなっています。
[Opacity:40%の場合]
2. ラインの設定
ここではラインの設定について詰める事ができます。マテリアルウィンドウからfinalToon -Edgesでラインの詳細を決めます。Enable
Edgesのアクティブのチェックを切り替える事でラインのオン/オフ切り替えが出来ます。まず初期状態はDefaultのままになっているのでUse Local設定に。これでFold
Edges以下の詳細設定が可能になりました。各々のdefaultボタンを押すとラインの色、太さ、破線等の形状を設定できるウインドウが新しく開くのでここでラインの基本設定が出来るようになっています。パラメータの名前や配置の仕方も分かり易くシンプルで使い易いよう工夫がされていると感じました。
それぞれのライン機能設定の説明を以下にまとめました。
***** Fold Edges *****
(外郭線)
Visibble Folds(以下V)-可視部の外郭ライン描画
Hidden Folds(以下H)-不可視部の外郭ライン描画
それぞれの組み合わせでレンダリングした結果が以下です
---> V
---> H
---> V+H
***** Crease Edges *****
(内郭線)
V-可視部の内郭ライン描画
H-不可視部の内郭ライン描画
それぞれの組み合わせでレンダリングした結果が以下です
---> V
---> H
---> V+H
***** Intersection Edges *****
(交差線)
V-可視部の交差ライン描画
H-不可視部の交差ライン描画
それぞれの組み合わせでレンダリングした結果が以下です
---> V
---> H
---> V+H
ここではパターンプライオリティ(Patter Prioirty)パラメータを使用して交差線の優先度を指定する事が出来ます。これは交差線が必ず2つのオブジェクト間に存在し、それらどちらかの設定を優先してラインを描画する事が出来るようになっています。
***** Angle Edges *****
(角度線)
V-可視部の角度ライン描画
H-不可視部の角度ライン描画
それぞれの組み合わせでレンダリングした結果が以下です
(角度設定 0度<= x <=90度の場合)
---> V
---> H
---> V+H
とりあえずThickness = 2.0でラインを設定しました。
床面が少し暗いので天井近くにオム二ライト(白、ピンク)をそれぞれ1つずつ置きます。結果、レンダリングしたのがこれ。少し光の具合が柔らかくなりました。
均一なラインにもう少し変化をつけたいと思います。finalToon -Edgesロールアウトからdefaultバーをクリック、Advnced
ShadowでIn-Shadow Style Onにすると光と影でシャドウカラーを
変える事が出来ました。
レンダリングした結果がこちら。
引き続きこのデフォルト設定でNoise Effectsをいじってみました。しかし表示されたロールアウトには Noise,
Noise と同じものが並んでいます。
あれ...!?同じNoise パラメータが2つ...?この部分の表示が良くわからなかったのでリファレンスで調べてみました。順にNoise Thickness,
Noise Opacity の事なのだそうです。
おそらく日本語版のせいなのでしょうが 正しく表示されていない部分がロールアウトの表示に所々ありました。とりあえずここでラインにノイズを与えられると分かったので適当にまずはチェックを入れてレンダリングしてみます。
レンダリングの結果がこちら。
確かに手描きで描いたようなラフな感じになりましたがちょっとラフ過ぎる気も。step=20.0でNoise Lineのチェックをはずしてレンダリングすると丁度良い仕上がり。こんな感じになりました。箸ペンや筆ペンで描いたようなタッチに少し近づきました。
引き続きこのデフォルト設定で2D Effectsを見ていきます。
Extend パラメータではライン長さの拡張性について設定します。とりあえず値を0 と100で試して具合を見てみました。
[ Extend = 0 ]
[ Extend = 100 ]
なるほど...。良い具合にラフなタッチを出すためにExtend = 3.0にしてみます。Concaveはラインの太さに対して凹処理をしてくれます。わかりやすいようにNoise
Effects設定とExtendをオフにしました。このConcaveでamount=100.0, Angle=45.0でレンダリングしてみます。Angle=180
だとライン端が凹になるのに対しAngle=45だと中央が凹になります。
Thicknessをオンにしてみます。これでレンダリングの結果を比較してみると
[ Thickness=on ]
[ Thickness=off ]
成る程。ここではThickness Pressureを設定してくれるので筆の筆圧を加減した仕上がりになりました。
3. シェーディングの設定
ここではシャドウやスペキュラ等、シェーディングに関する設定をします。Toon Parametersにおいてシャドウのサイズ、スペキュラの輝度値を上げてトゥーンシェーディングっぽさをだしてみます。
色々とシャドウやボディーBrightnessパラメータをいじってみると違った結果が得られました。
Blending Areasではどの程度Shadow/Body 、Body/Specularの境界をブレンドするか指定します。デフォルトでレンダリングしたものがこちら
[ Shd/Body=2, Body/Spec=2 ]
[ Shd/Body=40, Body/Spec=40 ]
ブレンド割合を高くしてやるとグラデーションが柔らかくなりますね。
4. finalToon Flat Mirror
今段階では壁、床面は通常のStandartモードです。
今度は床面に反射を与えてみる事にします。通常、オブジェクトに鏡の様に物体を反射させる質感を与える際には壁の反射マップにFlat Mirrorを指定します。今回はToonシェーディングなのでfinalToon
Flat Mirrorを反射マップで指定しました。これでレンダリングしてみると...
...あれ?床には反射したものの、アウトラインが無い...。トゥーンシェーディングモードにしただけでは駄目?とりあえずアウトラインを出すためにロールアウトのそれらしい設定を探してみました。finalToon
Edgesでもラインはアクティブになっているし、反射マップもアクティブになっている。うーん、原因が分からない...。リファレンスにはfinalToon
Flat Mirrorを与える、とだけ書いてある。反射したものには普通にアウトラインが入っているし。...特別な設定が何かある訳ですかね?ネットで検索して調べるが手がかり、無し。finalToon
チュートリアルがあったのを思い出してfToon Flat Mirrorが使われているサンプルのシーンファイルを見てみました。マテリアル設定を良くみてみると...Flat
MirrorマップがBody Colorに割り当てられているのを発見!
Standardでもそうなように「物体の反射 -> 反射マップ」だと思ったんだけど。fToon Flat Mirrorの場合はMaps ロールアウト/Body
Colorで与えてあげなければならないようです。で、この設定でBlur:0.0でレンダリングし直したのが、これ。
あ、何かおかしい。とりあえず床に反射した部分にアウトラインが入ってトゥーンらしくなったんだけど壁自体が黒になってしまって拡散反射光が無視されてます。確かFlat
Mirror自体が二次元平面の反射に限定されている、という事は壁が原因?現設定では壁と床がBoxの1つのオブジェクトになっているので、床面だけを一つの平面オブジェクトに作り直して再度fToon
Flat Mirrorに設定しなおしてみました。
床面の反射も拡散反射もうまくいったようです。
これで短い丈のトゥーンアニメーションを作ってみました。
finalToonを使ってみて
[感想]
まず前回のファイナルレンダーの時に比べて全体的に基本的な設定がすごく分かり易かったです。パラメーターをとりあえずいじってみてレンダリング結果から得られるものが大きくてその上、レンダリング時間が規定値のスキャンラインレンダリングとそれ程変わらない程早い。ただファイナルトゥーンのギャラリーやサンプルを見たり自分で実際に触ってみた個人的な感想からなのですが、他のトゥーンシェーダー(LightWave、Cinema4D)に比べバラエティは多い方ではないかもしれません。2次元的な表現といっても劇画的なものであったりスケッチやデッサン、セル画のようなものであったりと挙げるとしても多種様々です。それを考えるともう少し表現として選択出来る幅があったらもっと良いなと思いました。それを考えると値段に対してコストパフォーマンスは以下のようになりますね。満足度の評価は使いやすさ、分かり易さ、レンダリング時間から評価しました。
[総合評価]
レンダリング時間:★★★★★
使いやすさ:★★★★★
表現の幅:★★☆☆☆
コストパフォーマンス:★★☆☆☆
満足度:★★★★☆