Anark Studio 2.5 Review

Anark Studio 2.5 レビュー

2月11日 Anark Studio 2.5 英語版が発表され、3月3日 日本語版が ディ・ストームより公開開始されました。今回のレビューでは 2.5

の新機能を中心に紹介したいと思います。Anark Studio 2.5 は、2.0 のライセンスを持っているユーザーは無料でアップデートできます。その他の詳細は、

で確認できます。

Anark Studio について

Anark Studio は 2D、3D、ビデオ、音楽データなどを、インタラクティブでダイナミックなプレゼンテーションに統合できるメディア開発環境です。Anark

Studio によって作られた統合的メディアデータは Anark Media と呼ばれ、WWW、イントラネット、または Flash などとの連携により提供することが可能です。この

Anark Media は、基本的には、 Anark Client と呼ばれる専用のプレイヤーで閲覧できますが、ビデオファイルや実行形式(.exeや.app)、スクリーンセーバーなどに出力することもできます。

Anark Studio では、レイヤーの概念を持っていて、モデルや照明、スクリプトによる制御、キーフレームアニメーションなどを統合的に扱い、インタラクティブモーショングラフィックスが作成できます。これらの機能によって作成されたメディアは、e-learning

や販売デモンストレーション、展示会プレゼンテーション、ニュース、ゲームなど広範囲に及んだ用途に使用できます。

Anark Studio のバージョンヒストリー

バージョンアップが比較的早い Anark ですが、ここで今までのリリース時期を振り返ってみましょう。

  • 2002年 1月 Ver. 1.0 リリース
  • 2002年 7月 Ver. 1.5 リリース
  • 2002年12月 Ver. 1.5.2 リリース
  • 2003年 6月 Ver. 2.0 リリース
  • 2003年 7月 Ver. 2.0 Mac OS X 版リリース
  • 2004年3月 Ver. 2.5 WindowsMac OS X 版同時リリース

こうしてみると、だいたい半年に1回のバージョンアップというところでしょうか。正直言うと、Web3D というジャンルはそれほど活発ではないという意見もちらほら聞くので、このようなバージョンアップはとても重要だと思います。1.5

が日本で販売開始した当時は、Anark に関する日本語の情報というのはやはり少なかったのですが、今では、Google などでそこそこヒットします。「さわってみたい」という意見も少なくないので、今後のバージョンアップにも期待が持てます。

Anark Studio 2.5 の追加機能

Anark Studio 2.5 では、衝突判定、イメージのリモートソース、レンダリングオプション、そして、UI の改良やヘルプの充実度などマイナーバージョンアップながら、着実に機能性を高めています。ヘルプや

Readme からの追加機能の説明を元に、順次紹介したいと思います。

改良されたクロスプラットフォームのストレージパレット

ヘルプによると、『ストレージパレットは MacintoshWindows 上で同一仕様のパレットとなりました。またワークフローが改善され、インターフェイスもよりシンプルなものとなりました。

』というわけで、概観を比較してみましょう。

やはり 2.0 と同じく Mac OS X 版にはアシスタントパレット(ヘルプが表示されるパレット)はないのですが、それ以外は差はないです。これにより、より確実にクロスプラットフォームを実現しています。映像系には

Mac OS X ユーザーも多いので、Windows との連携がスムーズに行えることは、特にチームで作業する場合は、作業が効率化されることでしょう。

Windows 用の新レンダリングオプション

Windows用に新たにレンダリングオプションが追加されました。Anark 1.0 から1.5 までDirectXで、2.0でOpenGLになり、2.5では、OpenGL の他、DirectXまたは、ソフトウェアレンダラーでのレンダリングが選択可能になっています。これにより、OpenGLに非対応のビデオカードでも

Anark Media の再生が可能になり、これまでより多くの環境に対してコンテンツの配信ができます。

 

アプリケーションでプレビュー時の閲覧方法、プロジェクトの設定でユーザーにレンダリング方法を指示できます。

イメージ(静止画像)のリモートソース

PNGJPEG 形式のイメージはリモートソースからの読み込みが可能になりました。また Remote Source プロパティは、適切に記述されたビヘイビアと連動して使用すれば、連番画像を読み込ませることも可能です。』このデモがビヘイビアリファレンスにあります。下に転載します。

TYPE="application/x-am"

NAME="player"

PLUGINSPAGE="http://install.anark.com/client/version2/default/"

SRC="http://www.web3dnews.org/gallery/anark/review_as_25/am_obj/ChangeImageSrc.am"

WIDTH="347"

HEIGHT="247"

BackgroundColor="0xDCDCDC"

PresentationWidth="347"

PresentationHeight="247">

この機能により埋め込んだ画像だけに限らず、動的に内部で使用している画像を更新することができます。

改良された Windows 用ビデオ出力

『Anark Studio は Microsoft DirectShow 形式をサポートするようになりました。』

Windows マシン上では、新しくウィザード形式のインターフェイスを採用することにより、プレゼンテーションのビデオ出力が以前よりもはるかに簡単になりました。』

   

ウィザード形式によるステップを踏んでいけば、簡単に動画形式に出力できます。設定後は、レンダリングイメージがプレビューできるので、プレビュー中に不具合を見つけても、時間を無駄にすることなく、やり直しができます。

コンポーネントとイメージ用の新プロパティ

コンポーネントには二つのプロパティ Playback Speed と Initial Play State が追加されました。この二つのプロパティはコンポーネントに対し、新しいコントロール方法を提供します。』

Initial Play State は、コンポーネントが初期状態で再生状態にあるのか、停止状態にあるのかをコントロールするのに使用します。初期値は

Play (再生状態)になっています。

『イメージには Propagate Image Opacity プロパティが追加されました。このプロパティはイメージのアルファチャンネルデータをモデルの透明度に利用するかどうかをコントロールします。Anark

Studio へと読み込まれたかなり複雑なモデルに対して、イメージのアルファチャンネルではモデルが正しくレンダリングされない場合があります。例えば、キャラクタの肌をよりリアルに見せるために、いくらかの透明度を付加する場合があります。この場合、モデル自身の一部が透明にレンダリングされてしまうことがあるため、Propagate

Image Opacity を使用して、このインスタンスではイメージの透明度を使用しないということを、レンダラーに伝えることができます。』

というように、ヘルプには書いてあるのですが、実例を下に示します。

 

2つとも同じ PSD ファイルをつかったものですが、上はアルファチャンネルを有効にした場合、下はアルファチャンネルを無効にしたものです。前面のイメージに後ろの白い丸が隠れているのが分かります。

ActiveX の新しいコントロールメソッドとプロパティ

『幾つかの Windows ActiveX コントロールメソッドとプロパティが、利用できるようになりました。これによりプレゼンテーションの再生やレンダリングなど、様々なコントロールが可能になります。HTML

ページや ActiveX コンテナをサポートしている他のアプリケーションから Anark Media プレゼンテーションと通信できるように、幾つかの Windows

ActiveX コントロールメソッドが利用可能になっています。また ActiveX コントロールオブジェクトのプロパティも、幾つか利用できます。』

従来の HTML との通信に加えて、ActiveX の利用により、プレゼンテーションの一時停止、スプラッシュの表示、現在の状態(起動中、再生中、中断中など)、ループの指定、プレゼンテーションの時間の長さ、そして、レンダラーの指定や、クロックレートまでコントロールできます。これは

Anark の WWW への組み込みと、また、他のリッチメディアとの連携をサポートします。

スクリプトプロパティの追加

スクリプトに対し、新しいプロパティが数種類追加されました。アセットには startLifeTime と endLifeTime プロパティが追加されています。このプロパティは、タイムラインパレットにおけるタイムバーに基づいて、アセットの開始時間と終了時間を示すプロパティです。』

このプロパティはそのアセットに設定したタイムバーの開始時間と終了時間を返してくれます。これも、オブジェクト同士のアニメーションの同期に使用できます。

『モデルには boxMin、boxMax それに intersect プロパティが追加されました。これらのプロパティはビヘイビアにおける衝突検知に使用出来ます。』

これらのプロパティは、衝突を擬似的に表現するのに使用できます。それぞれ、オブジェクトのバウンディングボックスの各角のベクトルを返します。2.5 には、新たに追加されたビヘイビアに

Collider などがありますが、これらを拡張、または新規に衝突を表現するビヘイビアを作成するのに利用できます。下に付属のデモを転載します。

TYPE="application/x-am"

NAME="player"

PLUGINSPAGE="http://install.anark.com/client/version2/default/"

SRC="http://www.web3dnews.org/gallery/anark/review_as_25/am_obj/Collider.am"

WIDTH="347"

HEIGHT="247"

BackgroundColor="#000000"

BorderColor="#000000"

PresentationWidth="347"

PresentationHeight="247">

パチンコのように、シリンダに球が衝突しています。衝突計算などの物理計算は特にゲームの開発などに利用できます。

新しい CooperativeMode パラメータと Windows 用設定オプション

『HTML 出力時に埋め込む新規パラメータが追加されました。パラメータ CooperativeMode を使うと、Anark Client は OS

と連動して動作し、他のアプリケーションに対し処理能力を節約するため、再生を一時停止できるようになります。また Anark Media プレゼンテーションに対する設定ファイルに、設定オプション

-cooperativeMode も追加出来るようになりました。』

従来は Anark Media が再生されているウィンドウが非アクティブの場合は、プレゼンテーションを自動的に停止していましたが、HTML とのセットで出力する際、このパラメーターにより非アクティブでも再生をし続けることも指定できるようになりました。

タイムバーリサイズ時における新しいキーボードオプション

『[ と ] キーを使用して、オブジェクトのタイムバーをリサイズできるようになりました。このキーはそれぞれ、選択されたオブジェクトの開始ハンドルと終了ハンドルを、プレイヘッドの現在位置まで移動させます。』

この機能もまた、オブジェクト同士のアニメーションを組み合わせるのに役立つと思います。迅速な開発にはショートカットの適切な割り当てはとても重要なので、このような気の利いた

UI の改良は嬉しいですね。

インポーター・エクスポーターの改良

前回と同じく、3ds MAX や Maya、Lightwave、plasma、Chinema4D、Deep Exploration、discreet

Cleaner用のプラグインが用意されており、それぞれ改良されているようです。また、今回のバージョンでは、プレスリリースによると、Photoshop

PSD ファイルのインポーターが改良されているようです。

その他、今回試用してみて

以上が Readme や ヘルプに記載されている Ver. 2.5 での追加機能の内容ですが、その他、個人的に気づいた点などを追記したいと思います。

新たにいくつかのビヘイビアが追加されています

Collider.bvs

CollisionBox.bvs

オブジェクト同士の衝突に使用します
DynamicCollider.bvs

Grounded.bvs

これらのビヘイビアは、たとえば山肌のような凸凹した地形の上をウォークスルーさせる、などの用途に優れています
SquareFlexi プロパティの値を方形波状にアニメーションさせます。
Walk

基本的には Fly のようなものですが、ウォークスルー用に設計さており、歩行の際に上下に振動させたりなどの違いがあります。

デフォルトのオブジェクト名が英語で統一されています

以前のバージョンの日本語版では、オブジェクトのパスをコピーしてビヘイビアに貼り付けると、ビヘイビアエディタは日本語を正しく扱えないため、文字化けしていたのですが、今回は修正されており、パスのストリングスはそのまま利用できます。

タイムバーで数値入力が可能に

ミリ単位でのタイムライン編集が数値入力できるようになっています。プレイヘッドの位置もまた、数値入力できるようになっています。精密なタイミングをとるのに効果的でしょう。

ショートカットに追加があります

ヘルプファイルのショートカットの一覧を見てみると、各パレットの表示のオン・オフのショートカットが追加されています。パレットのレイアウトが作業の効率に影響する場合は、このショートカットは非常に役立つと思います。

チップスの充実

イメージやオブジェクトの最適化、ハイブリッド CD-ROM 用コンテンツの作成、PC 上で作成された Anark Player プロジェクトの Macintosh

への配信など、役立つチップスが沢山追加されています。

今後、期待される機能など

Anark Studio のマイナーバージョンアップでは主に UI の改良がなされてきているようなのですが、次のメジャーバージョンアップに期待する機能は、やはり次の点でしょう。

テキスト、キャラクター(スキンアニメーション)のサポート

個人的には Anark は 3D 版の Flash のような位置付けになるのではと期待しております。それにはやはりテキストのサポートは必須だと思います。また、3D

アニメーションではキャラクターが使用されることもすくなくないため、これを WWW 上で表現できればそのポテンシャルは格段にあがることでしょう。

4面図

現在でも直感的にシーンの編集はできるのですが、それでも1画面のパースペクティブで行うため、個人的な感想かもしれませんが、4面図のような機能が欲しいところです。

まとめ

毎回必ず UI を改良し、ユーザーの操作性を配慮してくれる Anark デベロッパーチームはとても好感がもてます。また、衝突検知や、イメージのリモートソースからの読み込み、ActiveX

用コントロールメソッドなどは次のメジャーバージョンアップに大きな期待をさせてくれます。特に衝突の機能は、Grounded ビヘイビアを見るとその将来性を感じることができるでしょう。本格的に、実用的な

Web3D 開発環境としてバージョンアップした Anark Studio 2.5 は他のリッチメディアへの宣戦布告ともなりえるでしょう。

2004/03/18 修正