Introduction
OptiTrackはNaturalPoint社が販売している低価格な光学式モーションキャプチャシステムです。従来の光学式モーキャプシステムは、システムを導入するだけでもかなり高額(数千万円くらい)なものでした。しかし、このOptiTrackを用いることで今までの10分の1以下に抑えることが出来ます。個人で利用するには高価だと思いますが、手軽にモーションキャプチャが行えるという点は非常に良いと思います。
今回は、準備から基本的な撮影方法までをレビューしたいと思います。詳しい内容は、次回以降少しづつ載せていきたいと思います。このレビューは、オフィシャルページのTutorial Videoと一緒にご覧頂ければ理解しやすいと思います。
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List of Content
- Foundation Package
- 内容
- Foundation Package以外に用意したもの
- カメラの設置
- ARENA Motion Capture Software
- カメラの設定
- Calibration Wizard
- Skelton Wizard
- 撮影
- まとめ
1. Foundation Package
今回レビューするのは、NaturalPointから購入したFoundation Package (6 cameras)についてです。OptiTrackは国内の代理店でも取り扱いが始まっています。
それでは、Foundation Packageについて見ていきましょう。
内容
Foundation Packageの内容は以下の通りです。
- FLEX:V100 Camera × 6
- License Activation Card
- Calibration Square
- Calibration Wand
- Sync Cable : 15ft × 5
- USB Cable High Grade : 15ft × 6
- USB 2.0 Hub 7-Port D-Link (with USB Cable and Power Supply) × 2
ケーブル類が多すぎるので、写真には写していません。また、NaturalPointのオフィシャルページや国内の代理店などで確認できます。
オフィシャルページでは、ARENA Motion Capture SoftwareがCD-ROMで入っているように書かれていますが、実際に弊社に届いたFoundation Packageには含まれていませんでした。その代わりに、「アプリケーションをダウンロードして使ってください」と書かれた紙が1枚入っていました。ダウンロードは、オフィシャルページのSupport->Downloads->Softwareから行えます。ARENA Motion Capture Softwareに関しては後ほど詳しく書きますが、カメラを持っていないとこのアプリケーションは使えませんので注意してください。
Foundation Package以外に用意したもの
以下がFoundation Package以外に用意したものです。
- Marker Set : 5/8" Semi-Soft × 2
- Motion Capture Suits (Size: Adult Medium & Adult Large)
- Modified Shoes × 2
- DG-CAM11 デジカメスタンド × 6
- SLIK S-POLEII × 6
- SLIK SBH-60 × 6
Foundation Packageの残念なところは、マーカー・スーツが別売りであることです。弊社では、Viconシステムを用いてペアモーションを撮る計画があったために2着用意しました。Viconを用いて撮影したモーションデータは、Mocapdata.comでクリエイティブ・コモンズ・ライセンスにて公開されておりますので、興味のある方はご利用ください。
マーカーについて注意があります。このマーカーはベルクロベースに付いているネジで固定していますが、固定後に引っ張ると簡単に外れます。そして壊れます。二度と固定されることはありません。十分に注意しましょう。
靴に関しては、特に注意点はありません。マーカーをガムテープや両面テープで貼り付けて使用しています。今のところ問題点はありません。結局、固定されていれば問題ありませんので、剥がす際に多少の痛みを伴うでしょうが、足に直接貼り付けてもかまわないと思います。
写真の品はMarker Setに入っているRigid Body Baseです。マーカー同士の絶対距離が常に一定になるのでこれはなかなか優れた物だと思いました。修正にはRigid Bodyがとても役に立つのですが、残念ながらRigid Body Toolkitは別売りのようです。ちなみに、値段は$499です。日本円では大体5万円強です。
三脚に関しては、これ以上にしっかりとした三脚が必要です。また天井から吊るすのも検討の余地があるでしょう。この三脚での問題点は、
- 高さが足りない
- 強度不足
- 見た目が弱そう
です。高さが足りないために延長用ポールを購入して使用していますが、強度不足の為に不安定で危ないです。下手をすれば、一個数万円のカメラが地上約2mの高さから落下するわけですので、もっとしっかりしたものを選んだ方が安心できます。ただし、コスト面では非常に優秀な三脚です。
延長用ポールと自由雲台は必要があれば用意してください。撮影環境によりますが、三脚の選択次第では必要ありません。しかし、SBH-60はカメラの大きさに丁度良く、非常に使い勝手が良いです。
写真には写っていませんが、非常用として両面テープとガムテープがあるとなお良いでしょう。モーションキャプチャには必須だと思います。
2. カメラの設置
オフィシャルページにてカメラ数に応じた設置方法が画像で説明されています。今回は、カメラ6台を三脚を使用して設置しますので、直径が大体3~6メートルの円周上に設置します。これで撮影可能範囲は、直径約1.5~3.0メートルの円内となります。撮影可能範囲は、カメラ台数にかかわらずこの程度が限界のようです。撮影場所を簡単に変更できる点が三脚を使用する際の利点だと思います。ただし、三脚を目一杯伸ばした状態では、カメラがかなり高い位置にあるため、私の身長(約170cm)では調整が難しく、設置の難易度は高いと思います。
カメラの設置法ですが、できるだけ上から見下ろす感じで設置することで良い結果が得られました。この時、原点位置にCalibration Squareを置き、カメラがしっかりと3つのマーカーをとらえているか確認しながら設置するとうまくいきます。しかし、この方法ですと極端に撮影範囲が狭くなる事もありますので、工夫しながら試して下さい。足下に置かれたマーカーばかり気にしていると頭のマーカーが撮れませんので注意して下さい。今回は高さ約2.5メートル程度にしてあります。
3. ARENA Motion Capture Software
カメラの設置が終わったら、ARENAによるカメラの設定・撮影になります。ここで、ARENAの特徴を少し書きたいと思います。ARENAの機能で最も特徴的な部分は、Calibration WizardとSkeleton Wizardという機能があるところでしょう。Calibration Wizardを利用する事で、Calibrationするための準備から実行までが比較的簡単に行えます。またSkeleton Wizardでは、アクターに付けるマーカーの位置を確認しながら準備できるため、非常に楽に作業が行えます。
これら以外の特徴としては、Vicon用の出力ファイルとしてc3d形式、汎用の出力ファイルとしてbvh形式のファイルを出力する事ができます。詳しい流れはこちらのページにあるチュートリアルビデオをご覧ください。一度ご覧頂ければどのように設定を行うかという流れを理解して頂けると思います。したがって、今回は詳しい説明を省き、注意すべき点を中心に書いていきたいと思います。
カメラの設定

カメラの設定に置ける注意点は、Camera Settingsの各パラメータの値をどのように設定するかです。環境にもよるため、毎回同じ値にすれば良いという訳ではありません。必ず毎回調整して下さい。今回はキャリブレーションを2パターンで試しました。それぞれの値は以下の通りです。
最大値 | パターン1 | パターン2 | |
Thresh | 253 | 約160 | 約160 |
Expos | 399 | 約20 | 約50 |
Intensity | 15 | 15 | 10 |
今回はFPSは100のままで行いました。そのため、この2パターンの差はExposとIntensityの差だけです。ExposはExposure(露光)に関する設定です。Intensityはカメラの周りについている赤外線LEDの光量を調節するパラメータです。この2つはトレードオフの関係にあるので注意しましょう。
パターン1の場合でも2の場合でもキャリブレーション自体はうまく行きます。しかし、パターン1では撮影時に多量のノイズが発生してしまいます。これは、Intensityの値が高すぎるためだと思われます。パターン2はIntensityを少し抑えていますが、撮影は比較的良好でした。無理にIntensityを高くするよりも、Exposをできるだけ高い値で撮影できるような設定にした方が良いのかもしれません。ただし、Exposもあまり高すぎる値で用いるとノイズがたくさん発生します。
Calibration Wizard
Calibration Wizardについては、あまり注意する点はありません。指示に従って設定していくだけで大丈夫です。このWizard内では1カメラにマーカーを2つ以上認識させるとエラーが出ます(以下の画像のようにCamera Preview画面が赤くなります)。これは、キャリブレーションワンド以外のマーカーをノイズとして判断するためです。キャリブレーションワンドを認識させたときにCamera Preview画面が赤くなる場合は、Camera Settingsのパラメータを変更して下さい。
上がキャリブレーション中の画像です。緑の線はキャリブレーションワンドの軌跡です。この線によりキャプチャーボリューム(撮影領域)が決まりますので、できるだけまんべんなく塗れるようにして下さい。この際にノイズが発生すると緑の線ではなく、赤の線が表示されてしまいます。少しであれば問題ないと思いますが、実際にキャリブレーションに影響が出るかどうかは分かりません。キャリブレーション自体が成功したからといって、きれいに撮影できるとは限りませんので注意して下さい。
Skeleton Wizard
上の画像のようにSkeleton Wizardではまず、マーカーを装着する所から始まります。指示に従って進めて下さい。画像内左側に写っているのがマーカーの装着位置をしめすSkeletonです。このSkeletonは視点を変えて見る事ができますので、装着位置が分かりづらい場合は、視点を変えて確認して下さい。個人的には、キャリブレーションを行う前にアクターにマーカーを装着しておいた方が良いと思います。キャリブレーション終了時に一度アクターをカメラで見る事で、撮影可能かどうか判断できるからです。
T-Poseの設定です。これがうまくできれば、簡単に撮影に移る事ができます。T-Poseを撮るときの注意点ですが、とにかく動かないようにして下さい。キャリブレーションがうまくできていれば10秒程度の撮影で十分でしょう。ノイズが出やすい場合は撮影時間を長く取るか、キャリブレーションからやり直して下さい。
上の画像はアクターの身長と肩幅を設定します。これを正しく設定しないとSkeletonが変な格好になりますので、しっかり設定して下さい。ここまでしっかりと撮影ができていれば、この後の設定はほぼ自動でできるので簡単にできるでしょう。自動でできない場合はきれいに撮るのが難しいのでやり直した方が良いかもしれません。
撮影
上の画像が今回撮影したモーションの一部です。動画を載せた方が良いとは思いますが、今はまだテスト段階でありきちんとした物が撮れていませんのでご了承ください。次回のレビューで掲載する予定です。サンプル用にc3dとbvhのファイルを載せたいと思います。
撮影に関しては、何も難しい事はありません。Skeleton WizardでSkeletonをマーカーに対応させておけばリアルタイムでSkeletonが動きます。そのため、撮影をしながらキャプチャーしたデータを確認する事ができます。ただし、精度面では少し問題があるかもしれません。この点はもう少し調べる必要がありそうです。
まとめ
OptiTrackの最大の特徴はとにかく「安価であること」です。他の光学式モーキャプシステムに比べれば機能面・性能面で劣るかもしれませんが、そこを気にせず使えるのであれば非常に優秀なシステムだと思います。
今回は分かりにくい部分が多かったと思いますので、次回に期待して下さい。次回は、
- ARENA Motion Capture Software(長所と短所)
- 出力ファイルについて(c3d, bvh)
- 撮影・編集について
を中心に書いていきたいと思います。掲載時期は7月中を予定しております。ご要望等ありましたらこちらまでご連絡ください。また、実際にMocapのデータを試してみたい方は、mocapdata.comをご覧ください。オープンソース(クリエィティブコモンズ)ライセンスで使えるデータが多数用意してあります。