ZBrush Review part2(4)

4. 16ビットのDisplacement Map

ZBrushでは、最終的にオブジェクトに作成したディテールを「テクスチャ」として他のソフトにエクスポートします。

ディテールを作成した何百万ポリゴンのオブジェクトを、オブジェクトファイルとしてエクスポートする事も可能ですが、他の3DCGソフトでは何百万ポリゴンに対応する事が難しいのでフリーズしてしまうかもしれません。そのためZBrushはディテールをテクスチャにしてエクスポートする手法が可能です。これにより、エクスポート後にクリエイターの希望通りファイルの修正や微調整が可能です。エクスポートするテクスチャは、ZBrushで作成したDisplacement Map、Normal Map形式で出力します。

まず最初はDisplacement Mapです。Displacement Mapは、オブジェクトのポリゴンを変形するテクスチャです。Bump Mapのように擬似的では無く、実際にポリゴンを変形させるので、陰の付き方がはっきりとして、Bump Mapと比べ輪郭等の処理がはっきりします。Figure4-1がBump Mapとなり、Figure4-2はDisplacement Mapになります。実際の画像を比較してみるとその差ははっきりと分かるでしょう。


Figure4-1 Bump Map適応例


Figure4-2 Displacement Map適応例

しかし、Figure4-2の様にDisplacement Mapは扱いが難しいため、ポリゴンを変形させるので、テクスチャを描くのにもテクニックが必要となります。実際、Figure4-2ではオブジェクトのつなぎ目が切れています。またDisplacement Mapはグレースケールイメージで表現するので、8ビット(256階調)のグレースケール(Figure4-3)でオブジェクトのディテール表現には限界があるため、実際にはそこまで細かくオブジェクトを変形させる事はできません。


Figure4-3 グレースケールイメージ

これに対してZBrushは、従来のDisplecement Mapよりさらに多くのデータを保持した16ビット(65,536階調)のDisplacement Mapを作成する事が可能です。16ビット形式のデータを扱えるので、従来のDisplacement Mapとは違い、より詳細なディテールを付加する事が可能になっています。ZBrushでは、16ビットのDisplacement Mapを画像としてエクスポートするので、16ビットをサポートしているTiff等のファイル形式が必要になってきます。

Displacement Mapの問題点

Figure4-2の画像から分かる通り、Displacement Mapはオブジェクトを構成しているポリゴンから変形させます。Displacement Mapを使うには、他の3DCGソフトで必要な最低限のポリゴン数にしなくてはなりません。ポリゴン数を増やさず、無理にDisplacement Mapを使うとFigure4-4の様にポリゴンの最小サイズが大きいためにうまくポリゴンが細分化されず、オブジェクトが無駄に膨らむだけになります。


Figure4-4 低ポリゴンのオブジェクト


Figure4-5 Displacement Map適応例

Displacement Mapは、パラメータの設定が難しく、値を少し変更しただけでもオブジェクトは顕著に変化します。またポリゴンをきれいに分割せず、16ビット形式でエクスポートしたDisplacement mapを3DS Maxのオブジェクトに適応したところ、ZBrushで作成したディテールがあまり反映されませんでした。通常の倍近い情報を保持できる16ビットのDisplacement Mapでも、何百万のディテールを再現するのにはある程度のポリゴンが必要となります。実際に先程のオブジェクトはポリゴン数も4万ポリゴンに増やさなくてはなりませんでした。ムービー等で使用する場合は、4万ポリゴンぐらいなら許容範囲かもしれませんが、これではリアルタイム処理を行うゲーム等では使用できません。

またDisplacement Mapをオブジェクトに適応し、レンダリングを行う場合、通常のテクスチャよりもレンダリング処理時間が長くかかります。ムービーや静止画を作成する場合は、レンダリング時間はそれほど問題になりませんし、クオリティーを優先する場合は、オブジェクトを直接変化させるDisplacement Mapの方が有利が、ゲームではクオリティよりも処理速度を重視するため、ZBurshではNormal Mapもサポートしています。次はクオリティーよりも、処理速度を優先する場合の、Normal Mapを紹介します。

Normal Mapとは?

Normal Map(法線マップ)とは、最近ではCGだけでは無く、ゲームでもごく普通に使用されているテクスチャです。

Normal Map(Figure4-6)は、Bump Mapに似ており、Bump Map同様オブジェクトの凹凸を仮想的に表現します。それにより、処理速度もDisplacement Mapに比べ非常に高速です。


Figure4-6 Normal Map

ではBump MapとNormal Mapの違いはどこにあるのでしょうか?Bump Mapテクスチャは通常、白黒のグレースケールイメージで表現しますが、白黒のグレースケールイメージでは「オブジェクトがどの程度、法線の方向に盛り上がっているのか」といった情報しか付加でき無いため、ポリゴンの法線以外の方向には凹凸を表現できませんでした。Normal Mapは、この法線の情報をコントロールし、ありとあらゆる方向に凹凸の情報を付加する事が可能です。原理としては、Normal mapはRGB(Red、Green、Blue)の色情報を保持しており、それぞれのRGBの色情報をCGソフトで言うXYZ座標に見立てて表現しています。Normal Mapテクスチャは、Bump Mapテクスチャとは異なり「グレースケールイメージの様に、自分で色を塗って作成する」という方法では作成できません。なぜなら法線の情報を厳密に定義するためRGBの色情報を正確に使用しないといけないからです。ZBrushでは、このNormal Mapを非常に簡単に作成する事ができます。

Normal Mapの問題点

処理速度が早く、正確に凹凸情報を記録できるNormal Mapですがやはり欠点も存在します。まず第一に仮想的に凹凸を表現するため、オブジェクトの端の凹凸を表現できない点や、仮想的な凹凸に陰の情報を付加しているため設定を間違えると陰がおかしくなってしまう点です。どちらも仮想的な凹凸であるがゆえの問題ですが、それでもNormal Mapが表現するディテールは素晴らしいと言って良いでしょう。

次のページではZBrushを使用してNormal Mapを作成していきます。

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